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​1.希少がん

​希少がんは、基礎研究や臨床研究の発展に乏しく治療法の開発が遅れています。希少ゆえに研究材料の確保が難しく、細胞培養などの病態解析モデルが発展して来ませんでした。私たちは、中でも頭頚部癌(舌癌や耳下腺癌など)に注目し、手術により切除した希少がん組織から患者由来細胞の培養系を構築し、病理組織学的解析やがんゲノム解析に加えて生細胞培養解析を実施し、希少がんへの理解を深めて新規診断法や治療法の開発を目指しています。

臨床応用を見据えた希少がんの研究基盤(細字).png

​BDNF/TRKB

BDNF(brain-derived neurotrophic factor)とその受容体TRKB(tropomyocin-related receptor B)チロシンキナーゼは、様々ながんで発現が上昇し、がんの進展に働いています。私たちは、希少がんの1つである舌癌症例を解析し、低分化型癌において、両分子は発現が上昇して、癌の脈管浸潤、リンパ節転移、再発などと正の相関を示し、予後不良の指標となることを報告しました。さらに、ヒト低分化型舌癌細胞株を用いた細胞培養解析に加えて同所移植マウスモデル解析を実施し、TRKB阻害剤が癌の遊走や浸潤を抑制することが分かりました。TRKBは、TRKファミリー分子(TRKA、TRKB、TRKC)(遺伝子名:NTRK1NTRK2NTRK3)の1つであり、構造の類似したこれらTRKを標的とするTRK阻害薬ラロトレクチニブが開発されています。2018年米国、202​1年本邦において承認されて、NTRK融合遺伝子を持つ癌に幅広く適応されています。今回の解析から、舌癌においては、予後不良の低分化型癌の治療に有用であると考えられました。

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また、耳下腺癌においても、TRKBは発現が上昇し、舌癌と同様に予後不良の指標と正の相関を示すことが分かりました。中でも、一番に予後不良である唾液腺導管癌(salivary duct carcinoma, SDC)において、TRKBの発現が高く、SDCを特徴づけている分子の1つである可能性が示されました。

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患者由来細胞を用いたがん進展機構の解析

耳下腺癌の進展機構を理解するために、手術により摘出された耳下腺癌組織から耳下腺癌細胞と癌関連線維芽細胞(cancer-associated fibroblast, CAF)の初代培養解析系を構築して、両細胞の相互作用を解析しています。CAFは、がん微小環境(tumor microenvironment, TME)の主要な構成細胞として、がんのあらゆる進展機構(増殖、浸潤、転移)や薬剤耐性能に大きく影響するため、治療標的として注目されています。樹立がん細胞とCAFを用いた共培養解析を実施し、耳下腺癌が、BDNF/TRKBシグナルを介したCAFとの相互作用によって上皮間葉転換(epithelial mesenchymal transition, EMT)を促進し、細胞遊走能を上げることが分かりました。

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​患者由来細胞を用いた治療候補薬のスクリーニング

耳下腺癌は、希少ゆえに治療薬の発展が乏しく、科学的根拠に基づいた治療薬の整理や開発が求められています。私たちは、効果が期待される治療薬の選択や新規治療候補薬の探索を目指して、患者由来癌細胞を用いた薬効評価培養システムの構築を進めています。

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参考文献)

  1. Moriwaki et al., TRKB tyrosine kinase receptor is a potential therapeutic target for poorly differentiated oral squamous cell carcinoma. Oncotarget, 2018 May 18; 9(38): 25225–25243.

  2. Moriwaki et al., BDNF/TRKB axis provokes EMT progression to induce cell aggressiveness via crosstalk with cancer-associated fibroblasts in human parotid gland cancer. Sci Rep. 2022 Oct 20;12(1):17553.

  3. Moirwaki et al., Differential expression of TRKB tyrosine kinase in the two histological types of parotid salivary duct carcinoma with cancer aggressiveness. Oral Oncol, 2024 Apr:151:106751.

​2.がん細胞-がん微小環境間コミュニケーション

​がん細胞は、周囲に働きかけて、自身に都合のよい環境を整えて、進展していくと考えられています。がん周囲の環境は、がん微小環境(tumor microenvironment, TME)と呼ばれ、がんのあらゆる進展機構(増殖、浸潤、転移)や薬剤耐性能に大きく影響しています。私たちは、TMEに注目して細胞培養解析やがん移植マウスモデル解析を実施し、がん細胞とTMEの相互作用への理解を深め、新規治療薬の開発を目指しています。

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参考文献)

  1. Moriwaki et al., Augmented TME O-GlcNAcylation Promotes Tumor Proliferation through the Inhibition of p38 MAPK. Mol Cancer Res, 2017 Sep;15(9):1287-1298.

  2. Moriwaki et al., BDNF/TRKB axis provokes EMT progression to induce cell aggressiveness via crosstalk with cancer-associated fibroblasts in human parotid gland cancer. Sci Rep. 2022 Oct 20;12(1):17553.

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